佛像圖彙42
【42】七字文殊(しちじもんじゅ)
[通釈]
七字文殊 梵字はダン
『円覚経疏』一にいう「ここには妙首といい、あるいはまた妙吉祥という」と。
『注維摩』に「秦には妙徳という」とある。
経にいう「この仏は以前すでに成仏された。そこで名付けて龍種尊(りゅうしゅそん)という」と。
[注]
円覚経疏 えんがくきょうしょ。書名。円覚経の疏(註)は多いが『大方広円覚経大疏』(だいほうこうえんがくきょうだいしょ)と思われる。唐の宗密の述。華厳と禅の正系をもってみずから任ずる圭峰宗密が、もっとも意欲を涌かせた主著の一つ。詳しくは、「円覚経大疏釈義鈔」。宗密は中年にして儒より仏に入り、偶然にも『円覚経』を得ると、これを生涯の思想の根拠とするのであり、この書は単なる注釈にとどまらぬ独自の主張を含む。特に本来は『円覚経大疏』のために加えられた裴休の序を、みずから注する巻首の一巻や、本書三之下のごときは圧巻である。ただし、本書は永く写本として伝わり、中国では一度その伝を断つ。高麗の印本によって新たに紹興戊午(1138)に開版されたものが、現在の祖本であり、テキストにも問題が多い。宗密の他の著作、たとえば『円覚経略疏鈔』四巻(正蔵三十九)などとあわせて検討する必要があろう。 (禅籍解題 133)
妙吉祥 みょうきちじょう。サンスクリット語マンジュシュリーMañjuśrīの音訳〈文殊師利〉の略称。〈妙吉祥〉と意訳する。もと実在した人らしく、『文殊師利般涅槃経』にその伝が述べられている。
注維摩 ちゅうゆいま。書名 姚秦(ようしん)の僧肇(ちょう)の述。僧肇は鳩摩羅什(くまらじゅう)の経典の漢訳を助けた。「秦」とは「姚秦」の事。
[解説]
文殊は文殊師利(もんじゅしり)の略称。また妙吉祥菩薩などともいう。曼殊室利等とも音写し、妙吉祥、妙徳、妙首などとも訳す。文珠菩薩とも書く。 三昧耶形は青蓮華(青い熱帯睡蓮の花)、利剣、梵篋(ぼんきょう。椰子の葉に書かれた経典)など。
七字とは『華厳経大疏』第三卷にみえる七字義のことで、以下のとおり。
一、大 常に存在して名を得ること。過去・現在・未来の三世(さんぜ)にわたり変わることがない。
二、方 法によって名を得ること。仏界、菩薩界、縁覚界、声聞界、天界、人界、修羅界、餓鬼界、畜生界、地獄界の十界に及ぼす。
三、広 用によって名を得ること。あまねく十方に及ぼす。
四、仏 人によって名を得ること。義によって闇を照らす。
五、華 喻によって名を得ること。
六、嚴 功用によって名を得ること。
七、経 詮によって名を得ること。一大眼目となる大事なところ。よりどころとなるもの。肝要なもの。中心。また、最高のもの。
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