佛像圖彙37

【37】不休息菩薩(ふきゅうそくぼさつ)

[通釈]

不休息菩薩 梵字はカ 華鬘印(けまんいん)

『名義集』(みょうぎしゅう)に云う、「乾陀訶提」(けんだかだい)と。ここには不休息というのは、一刹那に薩婆苦海に流入し、初めより休息することがないからである。


[注]

『名義集』 書名 正しくは翻訳名義集。南宋の法雲の撰。梵漢辞典。

乾陀訶提 不休息菩薩のこと。

念念 (「念」はkṣaṇa の音写「刹那」の訳。時の極少の意。「に」を伴って副詞的にも用いる) 仏語。一刹那一刹那。一瞬間。時々刻々。

薩婆 娑婆と同じ。

苦海 仏語。生と死、苦悩などが海のように果てしなく、どこまでも続き、繰り返されている現世のこと。三世六道世界のこと。


[解説]

 不休息菩薩(本書では「ふきゅうそく」と仮名が振ってあるが、「ふくそく」と読む人(宗派?)もいるようである)は、『妙法蓮華経』第一巻の序品第一に名前が登場する菩薩。但し、それ以降には登場しない。尊名は休まず修行を続ける者の意で、いわば修行者向けに創作されたものかもしれない。修行には意味があるし、何よりも続けなければ成るものも成らない。今日やることを明日に回して今日は休もうなどと思った瞬間、今までの修行は台無しになるし、なまけぐせもつく。どんな日でも、僧侶が基本的に連日、朝な夕なに読経のお勤めをするのも修行であり、1回のお勤め自体は具体的な功徳があるかどうかは分からない。しかし、そういうことを考えるよりも、休まず続けていることによって得られるものは必ずある。そのように信じることが信仰であり、不休息菩薩さまのように修行の身であるからには続けることが大事だ、これが苦海に生きる者の務めであり、後世につながることである、ということを表わしているように思われる。

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