佛像圖彙28
【28】薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)
[訳]
薬師瑠璃光如来 梵字はベイ
ここから東方へ去ること十競伽沙の仏土に一つの世界が有る。名を浄瑠璃国という。そこにおわす仏の名を薬師瑠璃光如来という。十二の大願を発せられた。(割注)以上は七仏本願経の説に基づく。
[注]
『七仏本願経』ではここまでが上巻。下巻は十二の大願を説き偉大なる功徳を頌える。
歌曲の浄瑠璃は御伽草子の浄瑠璃姫物語に據る。薬師十二大願に基づき十二段に語られる。後に三味線に乗せられて更に発展した。
[解説]
七仏薬師の最後はお馴染みの薬師如来。正しくは標題にあるように薬師瑠璃光如来。医王善逝(いおうぜんせい)、大医王仏とも。十三仏の四十九日(七七日)導師、また、三十日秘仏の八日仏にも配されている。
左手に薬壷を持ち、右手の薬指が前に出ているのが特徴。奈良時代に作られたものは、薬壺を持たないものも。『佛像圖彙』の絵は両手で薬壷を持っている。この例は彫像には殆ど見られず、仏画に多いようである。
両手で薬壷を持つ例(高野山真言宗光明山南昌院のHPより)
日光菩薩、月光(がっこう)菩薩を従えて三尊形式で祀られたり、十二神将を従えるものもある。
薬師如来の浄土は浄瑠璃浄土と呼ばれ、物語などの浄瑠璃の言葉はこれに由来する。
この世における衆生の疾病を治癒して寿命を延べ、災禍を消去し、衣食などを満足せしめ、瑠璃光を以て衆生の病苦を救う医薬の仏として、如来には珍しく現世利益信仰を集める。来世の幸福を願って神仏に祈るのが信仰とはいえ、生者としては日々の苦しみを軽くしたい、除きたいと願うのは当然で、それを叶えてくれる神仏を求める気持ちから、薬師如来のような現世利益型の仏さまが生まれ、多くの信仰を集めるようになったのだろう。
十二の誓願は以下の通り。(13ある)
1 自身の光明照耀(こうみょうしょうよう)に依って、一切衆生をして三十二相八十随形(ずいぎょう)を具せしむるの願。
2 衆生の意に随うて光明を以て種々の事業を成弁せしむること。
3 衆生をして欠乏を感ぜしめず、無尽の受用を得せしむること。
4 邪道を行ずる者を誘引して皆な菩提道に入らしめ、大乗の悟りを開かしむること。
5 衆生をして梵行を修して清浄なることを得、決して悪趣に堕せしめざること。
6 六根具足して醜陋(しゅうろう)ならず、身相端正(しんそうたんせい)にして諸の病苦なからしむること。
7 前述の如く諸病悉除。
8 女(にょ)を転じて男(なん)と成し、丈夫の相を具して成仏せしむること。
9 外道の邪見に捕らえられて居る者を正見に復(ふく)せしめ、無上菩提を得せしむること。
10 もろもろの災難(さいなん)刑罰(けいばつ)を免れしめ、一切の憂苦を解脱せしむること。
11 飢渇(きかつ)に悩まされ、食を求むる者には、飯食(ばんじき)を飽満せしめ、
12 又、法味(ほうみ)を授けて安楽を得せしむること。
13 所求満足の誓いで、衆生の欲するに任せて衣服珍宝等一切の宝荘厳(ほうしょうごん)を得せしめんとすること。
真言
薬師如来の真言は、以下の通り。
小咒
オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ(oṃ huru huru caṇḍāli mātaṅgi svāhā)
中咒(台密)
オン ビセイゼイ ビセイゼイ ビセイジャサンボリギャテイ ソワカ(Oṃ bhaiṣajye bhaiṣajye bhaiṣajyasamudgate svāhā)
大咒(東密)
ノウマク バギャバテイ バイセイジャ クロ ベイルリヤ ハラバ アラジャヤ タタギャタヤ アラカテイ サンミャクサンボダヤ タニヤタ オン バイセイゼイ バイセイゼイ バイセイジャサンボリギャテイ ソワカ(Namo bhagavate bhaiṣajyaguru vaiḍūryaprabharājāya tathāgatāya arhate samyaksambuddhāya tadyathā oṃ bhaiṣajye bhaiṣajye mahābhaiṣajya-samudgate svāhā)
東密(真言宗)も日常的(朝勤等)には小咒を唱えているようである。
奈良・薬師寺像(国宝・薬師三尊の中尊、坐像、奈良時代)
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