佛像圖彙25
【25】無憂最勝吉祥王(むうさいしょうきちじょうおう)
[訳]
無憂最勝吉祥王 梵字はシラ
東方に行く事七競伽沙の仏土に一世界有り。無憂国(むうこく)という。そこにおわす仏は名を無憂最勝吉祥王如来という。四つの大願を発せられた。
[解説]
七仏薬師の第四、無憂最勝吉祥王如来。説明文にはないが、いずれもお薬師さまなので、手には薬壷を持っておられる。この絵のは如意宝珠に見えるが、如意宝珠は地蔵菩薩、虚空蔵菩薩、如意輪観音などの持物と決まっており、これは薬壷である。
下図は「「薬師如来像の薬壷」の研究から私が学び得たもの」(奥田潤、薬史学雑誌 49(2))より「古い木造薬師如来像(国宝・重文)の薬壷で種々の形状のもの」。造像例を見れば明らかに如意宝珠とは違うことがわかり、仏師たちの知識がいいかげんなものでないことが改めてわかる。無論、『佛像圖彙』の絵がいい加減ということではない。
「無憂」の読みについて。「むゆう」と読んでしまいたいところだが、仏教用語や経典は呉音が基本であり、「憂」の字の呉音はウ、漢音はユウであることから、ムユウと読む。中国は歴史が長く土地も広大なために、一つの字でも音に違いが生じる。奈良時代に経典が輸入された時、呉音によって読まれていた時代的背景から、もっぱら仏書・仏語は呉音で読むようになったが、絶対そうでなければいけないというわけではない。言葉によっては漢音で読むものもあるし、天台宗など、唐音で一部の経典を読むということも行われている。
代表的なのが経の字。
呉音 キョウ
漢音 ケイ
唐音 キン
一般的な言葉である経営、経済、経緯、経過などはすべて漢音「ケイ」。お経、経文、読経、般若心経、法華経など、仏教関係は「キョウ」。但し、漢音で使われている言葉でも、仏語由来のものが少なくない。
さらに、仏語でも看経(カンキン)、諷経(フギン)といったものは唐音の「キン」で発音する。この場合、日本にもたらされた時代や高僧が比較的あとだったことに影響しているようで、古くに伝播していればカンギョウ、フギョウと読んだはずである。
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