佛像圖彙21
【21】胎蔵界大日(たいぞうかいのだいにち)
[訳]
胎蔵界大日如来 梵字はア(但しこの図版は切り継ぎに誤りがある) 印は法界定印
梵語の毘盧遮那は此れ最高・顕広・眼藏の如来の意味である。
胎蔵とは元々衆生の煩悩の欲するところより起こる。
一切の如来の智を表す。
[注]
如来 梵語のTathāgataの訳。真理に到達した人。仏陀をいう。仏の十号の一。漢語としての如来は、如(真理)より生来したものという意訳。仏陀は梵語Buddhaの音写。覚者・智者の意。具体的には仏教の開祖の釈迦牟尼(しゃかむに)の称。のちには、修行を積み正しい悟りを得た人の意にも用いられる。
煩悩 心身にまといつき心をかきみだす、一切の妄念・欲望。煩悩の根源(人間の諸悪の根源)は、
貪欲(とんよく)
瞋恚(しんに)
愚痴(ぐち)
の3つとされ、これをあわせて三毒(さんどく)と呼ぶ。三毒の中でも特に痴愚(ちぐ)、物事の正しい道理を知らないこと、十二因縁の無明が、最も根本的なものとされる。
煩悩はさまざまなものがあるが、修行者を欲界(下分)へと縛り付ける煩悩を、五下分結(ごげぶんけつ)と呼ぶ。結とは束縛の意。
貪欲(とんよく) - 渇望・欲望
瞋恚(しんに) - 悪意・憎しみ
有身見(うしんけん) - 我執
戒禁取見(かいごんじゅけん) - 誤った戒律・禁制への執着
疑(ぎ) - 疑い
この5つを絶つことで、不還果へと到達できるという。
いろいろな字が合わさったように見えるこの字は、全体で1文字で「ぼんのう(煩悩)」と読む。煩悩を感じる元である目や耳などの体の器官(これにより感覚となる)、「好」「平(普通)」「悪(嫌)」といった判断、「浄」と「染(不浄)」という状態、さらに文字には表わされていないが煩悩には「過去」「現在」「未来」の三つそれぞれに関わるものがある。
この字、全体で108画あり、煩悩の数と符合する。なお、「女子」とあるのは「好」の字をタテに分けて配置したものだが、男性にとって女性は最大の煩悩であることも意味している。
[解説]
胎蔵界大日如来は金剛界大日如来とともに真言密教の教主で、理徳の面を現示する。宇宙の実相を仏格化した根本仏であり,一切の現実経験世界の現象はこの如来そのものであるといわれる。さらに三世にわたって常に説法していると説かれる。金色の髪髻 (はっけい) の冠をかぶり,法界定印を結び赤色の蓮華の上に坐している。この両界の大日如来を合せて一体となったとき全仏格が発揮されると説いている。
岡山県瀬戸内市指定・真光院 胎蔵界大日如来坐像
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