訓蒙図彙48

訓蒙図彙 48

雛(すう)

[訓読]雛 すう ひな。俗に云ふ、ひよこ。鳥生れて、須(すべから)く母これに食(しょく)すべきは、これを鷇(こう)と謂ふ。ひな。燕雀(えんじゃく)の類是れなり。生れて自食する者、これを雛と謂ふ。鶏雉の類是れなり。


[通釈]雛 すう ひな。俗に「ひよこ」という。鳥が生れて、母鳥が雛に食べさせる間は、これを鷇という。ひなのこと。燕雀の類がこれにあたる。生れて自分で食べるようになると、これを雛という。鶏雉の類がこれである。


[語釈]●食 漢文訓読において、食物の意味の時は「し」、食べるという動詞の時は「しょく」と読む。ここは後者。なお、「ヲ」と送り仮名がついているが、これでは動詞にならず、再読文字である「須」へのかかり方もおかしくなる。「須」を再読ではなく「もち-ふ」と読むこともでき、「食(し)を須ふ」とすることは可能だが、この場合、「之」から「食」に返る部分がおかしくなる。訓読は江戸後期にはだいぶ整理され、読みやすくなったが、それ以前はいろいろな流派があ

り、癖のある読みをする人もいた。この部分の訓点が間違っていなければ、どのように読んだのか知りたいものである。


[用例]

漢.焦延壽『易林』屯:麟子鳳雛,生長家國,和氣所居,康樂溫仁,邦多聖人。

『後漢書』卷二三.竇融傳:今貴主尚見枉奪,何況小人哉!國家棄憲,如孤雛腐鼠耳

『三國志』卷三五.蜀書.諸葛亮傳裴松之注引『襄陽記』:劉備訪世事於司馬德操。德操曰、……此間自有伏龍鳳雛。備問為誰,曰、諸葛孔明、龐士元也。

『新唐書』卷二○三.文藝傳下.吳武陵傳:清河絕其南,弓高斷其北,孤雛腐鼠,求責不暇,又曷以救人哉

『紅樓夢』第一五回:令郎真乃龍駒鳳雛。

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