和俗童子訓126
貝原益軒著『和俗童子訓』126
婦人は夫の家を以て家とする故に、嫁するを帰るといふ。云意(いうこころ)は、わが家にかへる也。夫の家を、わが家として帰る故、一たびゆきてかへらざるは、さだまれる理なり。されど不徳にして、しうと、をつとにそむき、和順ならざれば、夫にすさめられ、しうとににくまれ、父の家に、おひかへさるるのわざはひあり。婦人のはづべき事、是に過たるはなし。もしくは、夫柔和にして、婦の不順をこらへて、かへさざれども、かへさるべきとがあり。されば、人をゆるすべくして、人のためにゆるさるるは本意にあらず。
【通釈】
婦人は夫の家を我が家とすることから、嫁するを帰るという。その意味は、我が家に帰るということである。夫の家を我が家として帰るのだから、一たび行って実家に帰らないのが婦人の定めである。
しかし、婦人が不徳にして、舅や夫に背き、和順でなければ、夫に嫌われ、舅に憎まれ、実家に追い返されるといった禍いを受ける。婦人として恥ずべき事、これに過ぎたるはなし。あるいは、夫が柔和な性格で、妻の不順を我慢して実家に帰すことはしない場合でも、本来はこれも実家に帰されるべき罪があるのである。
されば、婦人は人を許すことはしても、人から許されることは正しい事ではないのである。
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