和俗童子訓107
貝原益軒著『和俗童子訓』107
女に四行あり。一に婦徳、二に婦言、三に婦容、四に婦功。此四は女のつとめ行なふべきわざ也。婦徳とは、心だてよきを云。心貞(ただ)しく、いさぎよく、和順なるを徳とす。婦言とは、ことばのよきを云。いつはれる事をいはず。ことばをゑらびていひ、にげ(似気)なき悪言をいたさず。いふべき時いひて、ふ用なる事をいはず。人其いふ事をきらはざる也。婦容とは、かたちのよきを云。あながちに、かざりをもはら(専)にせざれども、女は、かたち(容)なよよかにて、おおし(雄々)からず、よそほひのあてはかに、身もちきれいに、いさぎよく、衣服もあかづきけがれなき、是婦容なり。婦功とは、女のつとむべきわざなり。ぬひ物をし、う(紡)み・つむ(績)ぎをし、衣服をととのへて、もはら(専)つとむべきわざを事とし、たはぶれあそび・わらふ事をこのまず。食物、飲物をいさぎよくして、しうと・おつと・賓客にすすむる、是皆婦功なり。此四は女人の職分也。つとめずんばあるぺからず。心を用ひてつとめなば、たれもなるべきわざ也。おこたりすさみて、其職分をむなしくすべからず。
【通釈】
女に四行(しこう)がある。一に婦徳、二に婦言、三に婦容、四に婦功。この四つは女の務め行なうべきわざである。
婦徳とは、心だてのよいことをいう。心が貞(ただ)しく、いさぎよく、和順であるのを徳とする。
婦言とは、言葉づかいがよいことをいう。嘘を言わず、言葉を選んで言い、女に似つかわしくない悪言を言わない。必要な時だけ言い、しかも余計なことは言わない。人の言うことを嫌がらずに聞く。
婦容とは、容姿のよいことをいう。無理に飾り立てる必要はないが、女は容姿がなよなよしくて雄々しくなく、装いが上品で身綺麗にし、いさぎよく、衣服も垢で汚れていない、これが婦容である。
婦功とは、女の務めるべきわざである。縫い物をし、糸をよりつむぎ、衣服を整えて、女として務めるべきことをよく行い、戯れ遊びや笑うことを好まない。食物、飲み物をむさぼらず、舅・夫・賓客に勧める、これらは皆婦功である。
この四つは女の職分である。よく務めなければならない。心をこめて務めれば、誰でも身に着くわざである。怠けたりやめたりして、自分の職分をむなしくしてはならない。
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