和俗童子訓97
貝原益軒著『和俗童子訓』97
文字をかき、書を写すには、筆画を能弁(わきまえ)しりて誤なかるべし。世俗の字をかくは、筆画に甚(だ)誤多し。心を用ひて筆画をしるべし。字画をしるには、説文を宗とし、玉篇の首巻、字彙の末巻、及(び)読字彙の内、字体弁徴、黄元立が字考を以て誤を弁ずべし。字学にも亦、心を用ゆべし。
【通釈】
文字を書き、書を写すには、筆画をよくわきまえ知っていれば誤りはない。世間で字を書くのを見ると、筆画に甚だ誤りが多い。よく注意して筆画を知ること。字画を知るには、「説文」(せつもん)を基本し、「玉篇」(ぎょくへん)の首巻、「字彙」(じい)の末巻、及び「読字彙」(どくじい)の内、「字体弁徴」(じたいべんちょう)、黄元立の「字考」(じこう)によって誤りを理解すること。字を学ぶにもまた、よく心を用いることが大切である。
【語釈】●説文 『説文解字』(せつもんかいじ)。最古の部首別漢字字典。略して説文ともいう。後漢の許慎(きょしん)の作で和帝のとき(紀元100年/永元12)に成立。 ●玉篇 中国、南北朝時代、梁の顧野王(こやおう)によって編纂された部首別漢字字典。 ●字彙 中国の明の万暦43年(1615年)、梅膺祚(ばいようそ)によって編纂された字典 。 ●読字彙、字体弁徴、字考 いずれも文字を説明した書と思われるが、未見。
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