和俗童子訓87
貝原益軒著『和俗童子訓』87
筆の取やう正しくして、筆さきの横にあたらざるやうに、筆鋒を正しく直(すぐ)にすべし。筆直に正しければ、筆の鋒あらはれずしてよし。筆がたぶけば、鋒あらはる。筆鋒のあたる所を、あらはれざるやうにかくすべし。左の筆をおこす所、ことにあらはれざるがよし。鳥のくちはしの如く、とがれるはあしし。又、右のかどに肩をあらはすべからず。鋒はつねに画中にあらしむべし。是を蔵鋒と云。鋒を蔵(かく)すをよしとす。
【通釈】
筆の執り方を正しくして、筆先の横にあたらないように、筆鋒(筆先)を正しくまっすぐにすること。筆がまっすぐで正しければ、筆の先が出なくてよい。筆が傾くと筆先が出る。筆先のあたる所を出ないように隠すこと。左の筆を起こす所は、特に出ないようにするのがよい。鳥のくちばしのように尖っているのはよくない。また、右のかどに肩を出してはならない。筆先はつねに画の中にあるようにすること。これを蔵鋒(ぞうほう)という。鋒(筆先)を蔵(かく)すのをよしとする。
【語釈】●蔵鋒 書道の用筆法の一。筆鋒(ひっぽう。筆の穂先)が筆画の外にあらわれないように書くこと。
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