和俗童子訓82
貝原益軒著『和俗童子訓』82
双鈎の法は、まづ筆を大指と食指にてはさむに、大指のはらと食指の中節のわきに筆をあつべし。此二指はちからを主どる。次に中指をかがめて、筆を指のとがりにつけ、筆をおさえ、次に無名指の外、爪と肉とのきはに筆をあて、上におさえあげて、中指と相対してさしはさみ、中指は外より内におさえ、無名指は内より外へをす、此二指は運動を主どる。大指と食指にて、上にてはさみたる筆を、又、中指と無名指を以て下にてはさみ、堅固にする也。次に小指は無名指の下かどにつらねて、無名指の力をたすく。筆の左にゆき右にゆく時、無名指をたすけて導き送る。筆をとる事、五指ともにあさきをよしとす。あさければ力つよくして、はたらき自由なり。
【通釈】
双鈎(そうこう)の法は、まず筆を親指と人指し指ではさむが、この時、親指の腹と人指し指の中節の脇に筆を当てる。この二指は力をつかさどる。次に中指を曲げて、筆を指の先端につけて筆をおさえ、次に薬指の外、爪と肉とのきわに筆をあて、上に押さえあげて、中指と相対してさしはさみ、中指は外より内に押さえ、薬指は内より外へ押す。この二指は運動をつかさどる。親指と人指し指で上ではさんだ筆を、又、中指と薬指で下ではさみ、堅固にする。次に小指は薬の下かどにつらねて、薬指の力を助ける。筆が左に動き右に動く時、薬指を助けて導き送る。筆をとるには、五指ともに浅いのがよい。浅ければ力は強くなり、しかも働きは自由になる。
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