和俗童子訓75
貝原益軒著『和俗童子訓』75
和流・から流共に、古代の能書の上筆を求めてならふべし。今時の俗筆をば、ならふべからず。手本あしければ、生れ付たる器用ありて、日々つとめまなびても、見ならふべき法なくして、手跡進まず。器用も、つとめも、むなしくなりて、一生悪筆にてをはる。わが国の人、近世手跡つたなきは、手習の法をしらざると、古代のよき手本をならわざる故也。
【通釈】
和流・唐流共に、古代の能書の上筆を求めて手本として習うのがよい。今時の俗筆を習ってはならない。手本が悪いと、生れつき器用で素質があり、日々努め学んでも、見習うべきところがないために、手跡は進歩しない。それでは、いくら器用で努めはげんでも効果がなく、一生悪筆のまま終わる。わが国の人で、近世ほど手跡が拙いのは、手習いの法を知らないのと、古代のよい手本を習わないからである。
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