和俗童子訓62
貝原益軒著『和俗童子訓』62
小児に初て書を授くるには、文句を長くおしゆべからず。一句二句をしゆ。又、一度に多く授くべからず。多ければおぼえがたぐ、をぼえても堅固ならず。其上、厭倦んで学をきらふ。必たいくつせざるやうに、少づつ授くべし。其をしえやうは、はじめは、只一字二字三字つつ字をしらしむべし。其後一句づつをしゆべし。既に字をしり、句をおぼへば、小児をして自読しむべし。両句をおしゆるには、先一句をよみをぼえさせ、熟読せば、次の句を、又、右のごとくによましめ、既(に)熟読して、前句と後句と通読せしめてやむべし。此の如くする事、数日にして、後又、一両句づつ漸、に従て授くべし。其後授くるに、漸、字多ければ、分つて二三次となして、授け読しめ、其二三次、各熟読して、合せて通読せしむ。若(もし)、其中、おぼえがたき所あらば、其所ばかり、又、数遍よましむ。又、甚(だ)よみやすき所をば、わかちよむ時は、よむべからず。是(れ)功を省すの法なり。
【通釈】
小児に初めて書物を教授するにあたっては、文句を長くして教えてはならない。一句二句と少しずつ教える。また、一度に多く授けてはならない。多ければ覚え難く、覚えたとしてもしっかりと身についてはいない。その上、嫌がって学ぶとを嫌うようになる。必ず退屈しないように少しずつ教えるのがよい。
教え方については、最初は、ただ一字二字三字ずつ字を分からせるのがよい。その後一句ずつ教える。既に字を知り、句を覚えたならば、小児に自読させる。
二句を教えるには、まず最初の一句を読み覚えさせ、熟読したならば、次の句を右のように読ませ、熟読して前句と後句とを熟読してから通読させてやめる。
このように数日かけて教えた後、また一二句ずつゆっくりと教える。その後教える際に、字が多ければ、二、三回に分けて教え読ませて、それぞれ熟読してから通読させる。
もし、その中で覚え難い所があれば、その所を数遍読ませる。また、とても読みやすい所は、分けて読む時は師は読まなくてよい。これは師の苦労を省くやり方である。
────────
0コメント