和俗童子訓61
貝原益軒著『和俗童子訓』61
凡書をよむには、はやく先をよむべからず。毎日返りよみを専(もっぱら)つとむべし。返りよみを数十遍つとめ、をはりて、其先をよむべし。しからずして、只はか(捗)ゆかん事をこのみて、かへりよみすくなければ、必わすれて、わがならひし功も、師の教へし功もすたりて、ひろく数十巻の書をよんでも益なし。一巻にても、よくおぼゆれば、学力となりて功用をなす。必よくおぼ(覚)ふべし。書をよんでも学すすまざるは、熟読せずして、おぼえざれば也。才性あれば、八歳より十四歳まで、七年の問に、小学、四書、五経等、皆読をはる。四書、五経熟読すれば、才力いでき、学間の本たつ。其ちからを以、やうやく年長じて、ひろく群書を見るべし。
【通釈】
およそ書物を読むには、早く先へと読み進めてはならない。毎日繰り返し読むのを専一に努めるのがよい。返り読みを数十遍努め終えてから先を読む。そのようにせずに、ただ読み進めることばかり好んで帰り読みが少ないと、必ず今まで読んだことを忘れて、せっかく習った功も、師が教えた功も無駄となり、広く数十巻の書物を読んでも益がない。たとえ一巻でもよく覚えれば学力となって功用につながる。必ずよく覚えるやり方をすること。
書物を読んでも学が進まないのは、熟読しないために覚えないからである。才性があれば、八歳より十四歳まで七年の問に、小学、四書、五経等、皆読み終わる。四書、五経を熟読すれば、才力が出来て学問の本が確立する。その力がついてだんだんと年を重ねたならば、広く群書を見るのがよい。
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