和俗童子訓59
貝原益軒著『和俗童子訓』59
小児の文学のおしえは、事しげくすべからず。事しげく、文句おほくして、むつかしければ、学間をくるしみて、うとんじきらふ心、出来る事あり。故に簡要をゑらび、事すくなく教ゆべし。すこしづつをしえ、よみならふ事をきらはずして、すきこのむやうにをしゆべし。むつかしく、辛労にして、其気を屈せしむべからず。日々のつとめの課程を、よきほどにみじかくさだめて、日々をこたりなくすすむべし。凡小児をおしゆるには、必師あるべし。若(もし)、外の師なくば、其父兄、みづから日々の課程を定めてよましむべし。父兄、辛労せざれば、をしえおこなはれず。
【通釈】
小児に学問を教えるのは、難しくやってはならない。複雑で、説明が多く、難解であれば、学問を苦痛に感じて、疎んじ嫌う気持ちができてしまう。だから簡要で少ない量を教えるのがよい。少しずつ教えれば、読み習う事を嫌わないから、すき好むように教えることが大切である。難しく面倒にして、小児の気持ちをくじけさせてはならない。日々の務めの課程を程よく短く定めて、毎日怠りなく進めること。
およそ小児を教えるには、必ず師があったほうがよい。もし外部で師となる人がなければ、父や兄が自分で日々の課程を定めて読ませるがよい。父兄が苦労しなければ、教えは行われない。
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