和俗童子訓45
貝原益軒著『和俗童子訓』45
農工商の子には、いとけなき時より、只、物かき・算数をのみをしえて、其家業を専にしらしむべし。必楽府淫楽、其外、いたづらなる、無用の雑芸をしらしむべからず。これにふけり、おぼれて、家業をつとめずして、財をうしなひ、家を亡せしもの、世に其ためし多し。富人の子は、立居ふるまひ、飲食の礼などをば、ならふべし。必いましめて、無頼放逸にして、酒色淫楽をこのむ悪友に、まじはらしむべからず。是にまじはれば、必身の行あしく、不孝になり、財をうしなひ、家をやぶる。甚おそるべし。
【通釈】
農工商の子には、幼い時よりただ読み書き・算数だけを教えて、家業に関することを専一に知らしめること。必ず流行歌や淫らな楽曲、その他無益・無用な雑芸を教えてはならない。これにふけり、溺れて家業をつとめず、財を失い、家を滅ぼした者は、世の中に多くいる。
富人の子は、立居ふるまひ、飲食の礼などをば、習ふべし。必ず戒めて、無頼放逸にして、酒色淫楽をこのむ悪友に、交はらしむべからず。是にまじはれば、必ず身の行悪しく、不孝になり、財をうしなひ、家をやぶる。甚だおそるべし。
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