和俗童子訓40
貝原益軒著『和俗童子訓』40
いかりをおさえて、しのぶべし。忍ぶとは、こらゆる也。ことに、父母・兄長に対し、少しも、心にいかり・うらむべからず。いはんや、顔色と眼目にあらはすべけんや。父兄に対していかるは、最大なる無礼なり。いましむべし。内に和気あれば、顔色も目つきも和平なり。内に怒気あれば、顔色・眼目あしし。父母に対して、悪眼をあらはすべきや、はづべし。孝子の深愛ある者は、必和気あり。和気ある者は、必愉色あり。子たる者は、父母に対して和気を失なふべからず。
【通釈】
怒りを抑えて忍ぶこと。忍ぶとは、こらえることである。特に、父母・兄長に対して、少しも心に怒りや怨みの気持ちを起こしてはならない。ましてや、顔色と目つきに出してはならないのは言うままでもない。
父兄に対して怒るのは、この上なく無礼である。戒めなければならない。内心に和気があれば、顔色も目つきも穏やかになる。内心に怒気があると、顔色も目つきも悪くなる。父母に対して悪い目つきをするのは恥ずかしいことである。
深く孝心のある子は、必ず温和な気がある。温和な者は、必ず愉(よろこ)びの顔色がある。子たる者は、父母に対して和気を失なってはならない。
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