和俗童子訓39
貝原益軒著『和俗童子訓』39
小児の時は、知いまだひらけず、心に是非をわきまへがたき故に、小人のいふことばに、まよひやすし。世俗の、口のききたる者、学問をきらひて、善人の行儀かたく正しきをそしり、風雅なるをにくみて、今やうの風にあはず、とてそしり、只、放逸なる事を、いざなひすすむるをきかば、いかにいとけなく、智なくとも、心を付て其是非をわかつべし。かくの如くなる小人のことばにまよひて、うつるべからず。
【通釈】
小児の時は、知恵がまだ開けず、心に是非を判断することができないために、小人(しょうじん)の言葉に迷わされやすい。世俗の口先ばかりの者は学問を嫌い、善人の行儀よく正しいのをけなし、風雅なものを憎んで今の時代に合わないと批判して、ただ放逸な事を評価し勧めるのを聞けば、いかにあどけなく知恵がまだ開けなくとも、よく気を付けて是非を見分けること。決して小人の言葉に惑わされて、それに引き込まれてはならない。
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