和俗童子訓38
貝原益軒著『和俗童子訓』38
子弟をおしゆるに、いかに愚・不肖にして、わかく、いやしきとも、甚しく怒のりて、顔色とことばを、あららかにし、悪口して、はづかしむべからず。かくの如くすれば、子弟、わが非分なる事をばわすれて、父兄のいましめをいかり、うらみ・そむきて、したがはず、かへつて、父子・兄弟の間も不和になり、相やぶれて、恩をそこなふにいたる。只、従容として、厳正にをしえ、いくたびもくりかへし、やうやく、つげ戒むべし。是子弟をおしえ、人材をやしなひ来す法なり。父兄となれる人は、此心得あるべし。子弟となる者は、父兄のいかり甚しく、悪口してせめはづかしめらるるとも、いよいよ、おそれつつしみて、つゆばかりも、いかりうらむべからず。
【通釈】
子弟を教えるにあたっては、いかに愚かで不肖で、若く、卑しい者であっても、激しく怒り罵倒したり、顔色と恐ろしく言葉を荒げて悪口を言ったりして、辱めてはならない。このようにすると、子弟は自分に非があることは忘れて、父兄の戒めを怒り、怨み背いて従わず、逆に父子・兄弟の間も不和になり、関係が壊れて恩を損なう事態に至ってしまう。
だから、ひたすら従容として厳正に教え、何度も繰り返し、少しずつ諭し戒めるようにすべき。これが子弟を教え、人材を養う法である。父兄となる人は、この心得が必要である。
子弟となる者は、父兄の怒りが激しく、罵倒され辱められようとも、ますます畏れ慎み、少したりとも怒ったり怨んではならない。
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