和俗童子訓37
貝原益軒著『和俗童子訓』37
子孫、年わかき者、父祖兄長のとがめをうけ、いかりにあはば、父祖の言の是非をゑらばず、おそれつつしみてきくべし。いかに、はげしき悪言をきくとも、ちりばかりも、いかりうらみたる心なく、顔色にもおらはすべからず。かならず、わが理ある事を云たてて、父兄の心にそむくべからず。只ことばなくして、其せめをうくべし。是子弟の、父兄につかふる礼なり。父兄たる人、もし人のことばをきき損じて、無理仏る事を以て、子弟をしゑたげせむとも、いかるべからず。うらみ、そむけいる色を、あらはすべからず。云わけする事あらば、時すぎて後、識すべし。或別人を頼みて、いはしむべし。十分に、われに道理なくば、云わけすべからず。
【通釈】
子や孫で年が若い者は、父祖兄長のとがめを受けて怒りに遭ったならば、父祖の言の良し悪しはさておき、畏まって聴くのがよい。いかに激しく罵倒されても、微塵も怒ったり怨んだりする気持ちはなく、顔色にも出してはならない。必ず、自分に理あることを言い立てて、父兄の心に逆らってはならない。何も言わずに責めを受けるようにする。これは、子弟の父兄に仕える礼である。
父兄たる人が、もし他人の言葉を聞き違えて、理不尽なことで子弟を虐げようとしても、怒ってはならない。怨んだり背くような気持ちを顔色に出してもいけない。言い訳をすることがあれば、時が経ってからすべき。或いは、第三者に頼んで言ってもらう。自分に道理がなければ、言い訳はしないのがよい。
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