和俗童子訓35

貝原益軒著『和俗童子訓』35

子弟、孫、姪など幼き者には、礼義を正しくせん事を教ゆべし。淫乱・色欲の事、たはぶれのことば、非礼のわざ、をいましめて、なさしむべからず。又、道理なき、善と,てはたら正しからざるふだまぶり、祈祷などを、みだりに信じてまよへる事、禁ずべし。いとけなく若き時より、かやうの事に心まどひぬれば、真心、くせになりて、一生其まよひとけざるものなり。神祇をば、おそれたうとびうやまひて、遠ざかるべし。なれ近づきて、けがし、あなどるべからず。わが身に道なく、私ありて、神にへつらひいのりても、神は正直・聡明なれば、非礼をうけ玉ばず。へつらひをよろこび給はずして、利益なき事をしるべし。


【通釈】

子弟、孫、姪など幼い者には、礼義を正しくする事を教えること。淫乱・色欲の事、戯れの言葉、非礼な態度を戒めて、させないようにする。また、道理のない、善とはいえない正しくない札守や祈祷などを、みだりに信じて迷うようなことは禁じること。

あどけなく若い時から、このような事に心を惑わされると、真心がゆがんでくせになり、一生その迷いが解けなくなってしまう。神祇を畏れ尊び敬って、そのようなものから遠ざけるようにすべきである。それに慣れ近づき、神祇を穢し侮ってはならない。自身に道がなく、私心によって神にへつらい祈っても、神は正直・聡明であるから、非礼を受けられることはない。へつらっても喜ばれず、なんの利益もないことを分からせることである。

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