和俗童子訓30
貝原益軒著『和俗童子訓』30
いとけなき時より、善をこのんで行なひ、悪をきらひて去る、此志専一なるべし。此志なければ、学問しても、益をなさず。小児の輩、第一に、ここに志あるべし。此事まへにもすでに云つれども、幼年の人々のために、又かへすがへす丁寧につぐるなり。人の善を見ては、我も行なはんと思ひ、人の不善を見ては、わが身をかへりみて、其ごとくなる不善あらば、改むべし。かくの如くすれば、人の善悪を見て、皆わが益となる。もし人の善を見ても、わが身に取て用びず、人の不善を見ても、わが身をかへり見ざるは、志なしと云べし。愚なるの至りなり。
【通釈】
幼い時より、善を好んで行ない、悪を嫌って去る、この気持ちを専一に志すこと。この志がないと、学問をしても身につかない。小児は、第一にここに志を持つことが大切である。
この事は前にも言ったが、幼年の人々のために、返す返すも丁寧に説明する次第である。
人の善を見ては、自分も行なおうと思い、人の不善を見ては、わが身を省みて、同じような不善があれば改めるようにする。このようにすれば、人の善悪を見て、すべてわが益となる。もし人の善を見ても、わが身に取り入れてて用いることをせず、人の不善を見ても、わが身を省みないのでは、志がなく、愚かの至りである。
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