和俗童子訓22

貝原益軒著『和俗童子訓』22

富貴の家の子にむまれては、いとけなき時より世のもてなし、人のうやまひあつくして、よろづゆたかに心のままにて、世界の栄花にのみ、ふけるならはしなれば、おそれつつしむ心なく、おごり日々に長じやすく、たはぶれ・あてびをこのみ、人のいさめをきらひにくむ。いはんや学問などに身をくるしめん事は、いとたへがたくて、富貴の人のするわざにあらずと思ひ、むづかしく、いたづかはしとて、うとんじきらふ。かかる故に、おごりをおさへて、身をへりくだり、心をひそめ、師をたうとび、古をかうがへずんば、いかにしてか、心智をひらきて身をおさめ、人をおさむる道をしるべきや。


【通釈】

富貴な家の子に生まれたならば、幼い時から世間の人からのもてなしや、人からの敬い方が厚く、何事も豊かで思いのままで、世界の栄花に耽るのが習慣となるために、畏れ慎むという心がなく、奢のりが日々に長じやすく、悪ふざけな遊びを好み、人の諫めを嫌がり憎むようになる。ましてや、学問などで身を苦しめる事は耐え難く、富貴の人のすることではないと思い、難しくて面倒だといって疎んじ嫌う。このようなわけで、奢りを抑えてわが身をへりくだり、心を鎮めて師を尊び、昔のことを古を考察しなければ、どうして心智を開いて身を修め、人を治める道を知ることができようか。

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