和俗童子訓17
貝原益軒著『和俗童子訓』17
志は虚邪なく、事は忠信にして偽なく、又、非礼の事、いやしき事をいはず、かたちの威儀をただしくつつしむ事をおしゆべし。又、諸人に交るに、温恭ならしむべし。温恭は、やはらかにうやまふ也。是善を行なふ始也。心あらきは、温にあらず。無礼なるは、恭にあらず。己を是とし、人を非として、あなどる事を、かたく戒むべし。高位なりとて、我をたかぶる事なかれ。高き人は、人にへりくだるを以、道とする事を、おしゆべし。きずい(気随)にして、わがままなる事をはやくいましむべし。かりそめにも人をそしり、わが身におごらしむる事なかれ。常にかやうの事を、はやく教戒むべし。
【通釈】
志は虚邪がなく、事は忠信にして偽りがなく、また、非礼な事や卑しい事を言わず、容貌の威儀を正しくし慎む事を教えるべき。
また、ひとと交わる時は、温恭であるようにする。温恭とは、柔和で相手を敬うことである。これが善を行なう端緒となる。心が荒いのは、温和ではないからである。無礼であるのは、恭順ではないからである。自分を正しいとし、他人を間違っていると決めつけ、侮るようなことは、厳に戒める必要がある。
たとえ高位だからといって、人より偉いと思ってはならない。高位の人は、人にへりくだることが道であるということを教えよ。気ままでわがままな事を早く戒めること。かりそめにも人をそしり、自分を偉ぶらせる事をさせてはならない。常に以上の事を、早く教戒するように。
0コメント