南留別志400
荻生徂徠著『南留別志』400
一 まな(真名)はかな(仮名)なり。かなはまなゝりと、神道者のいへるは、殊にひがみて覚ゆ。さらばまなといふ物のみあるなり。
[解説]真名は真字(しんじ)ともいい、漢字のこと。これに対して、漢字を崩したり一部分を取って代用した我が国古来の文字を仮名という(前者は平仮名、後者は片仮名)。独自の文字を持たなかった日本人にとって、文字として使用したのは漢字が最初であり、暫くは漢字漢文が文字表記(言語)のすべてだった。真名というゆえんである。漢字を元にして考案されたことから平仮名、片仮名というが、徂徠によれば、神道者は「真名は仮名であり、仮名こそが真名である」とする。つまり、平仮名や片仮名こそが日本古来の文字であり、漢字は仮に使っているにすぎない、ということ。これを「ひがみ」だと痛烈に批判する。
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