南留別志394

荻生徂徠著『南留別志』394

一   遠江国は、「とほつあふみ」の国なり。今切の渡のきれざりし前は、湖なるべし。飛騨国、美濃国は、道の左りみぎといふやうなり。


[解説]静岡県の西部の旧国名である遠江(とおとうみ)は、遠い近江(近江から遠くにある)という意味であるが、同様に飛騨は「ひだり」、美濃は「みぎ」が語源で、以上はすべて東海道を基準にするという説。近江から遠いというのは、近江は京に近く、日本の当時の中央からみれば浜名湖のある地域は近江よりはるかに遠いことから、このような国名になったのであろうとする。江戸時代においては、近江より遠江のほうが近く、さらに言えば家康ゆかりの三河と駿河の間にあるので重要な地といえるが、あくまで朝廷のある京が「上」(京へ行くことを上洛という)、江戸は「下」(江戸へ行くことは下向という)であることから、「遠江」は近江さらには京を仰ぎ見る意味である。

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