南留別志391
荻生徂徠著『南留別志』391
一 周防の国に、畜生谷といふ里あり。母子兄弟の間にて、婚姻をなすといふ。平家の余類なるべし。敵をさけて、人の通はぬ所に隠れ居て、子孫を長じたらんは、おのづからに、一族の外に、婚姻すべき族なかるべければ、里のならはしとなりしなるべし。
[解説]閉鎖性の強い地域について、平家の落人伝説のある所もその一つであろうとする。『諸国風俗』は徂徠のこの文を引いた上で、「阿波国忌部村ニテハ雖父母死者赤裸ニシテ壑ニ棄、隣村ヨリモ不昏姻ト阿波人石川東父話レリ。是亦上世ノ遺風ナルベケレドモ、後世有礼儀テヨリ見レバ非人情」と、阿波国忌部村も同様に村内の者同士で婚姻したことを挙げている。他にも同様の例は過去にあっただろう。
0コメント